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ものがたり

会津地方

羽染桂子さん

  • 未来デザイナー

「福をつなぐ人」

 

 

 

四方を1,000メートル級の山々に囲まれ、緑豊かな昭和村。

 

 

 

 

 

ここに、伝統の織物を次世代に繋ごうとしている人がいる。

羽染桂子(はそめ・けいこ)さん。

地域に伝わる「からむし織」を30年続けてきた。

 

 

 

さらりとした着心地が特徴のからむし織。

豪雪地帯で農作物の生産が難しい昭和村の現金収入として江戸時代から受け継がれてきた。化学繊維が広まって一時衰退する中、村では、なんとかこの織物を残そうと取り組みを続けてきた。

 

 

 

 

からむし織はとっても根気のいる伝統工芸。

からむしの繊維を一本一本手で繋いでいく。

帯一本分の糸を作るのに、およそ2ヶ月かかるという。

 

 

 

岩手県出身の羽染さんは、

高校卒業後、短大でデザインを学んでいた。昭和村にやってきたのは21歳のとき。

村が始めた「からむし織り体験制度」に応募した。

体験生は「織り姫」と呼ばれ1年間滞在。

からむしの栽培から機織りの作業までを学んでいく。

 

 

 

 

 

見知らぬ土地の暮らしに戸惑う羽染さんに、ある村人が声をかけてくれた。

織姫達を指導する役割だった「サトばあ」こと山内サトミさん。

サトばあと一緒にお茶をのみ、昔話を聞きながら糸を作るうち、

少しずつ村になじんでいったという。

 

 

長年村で暮らし、からむし織を作る中で気づいたことがあった。

「私1人ではない感じ。糸を教えてくれた人もいるし、道具も人が譲ってくれなければ無かったし、すべてが村の人からのつながりを感じられる。」

 

 

 

栽培から収穫まで、村の全員が協力し合って行うからむし作り。

道具も人から人へ代々受け継がれてきたものだ。

からむし織りは昭和村の人々の生活の一部だった。

 

 

 

 

5月上旬。村の作業場に多くの人が集まっていた。

今年、新たにやってきた新人の織り姫たち。京都や栃木など全国から5人が集まった。

さっそくからむし織の基礎であり、一番大切な糸作りの作業を教えていく。

 

 

 

かつて村の人たちが羽染さんを誘ってくれたように、

羽染めさんも織り姫たちをお茶に誘って一服。

 

 

 

 

「村に溶け込む第一歩みたいな。楽しんでほしいですね。こういう生活いいなと自然に感じてもらえればいいなと。」

世代を超えて、昭和村の暮らしの“糸”が、つながっていく。

 

 

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