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ものがたり

中通り

雨宮由里子さん

  • 未来デザイナー

「福をつなぐ人」

遠く離れた場所から、福島の人々の思いをつなごうとしている人もいる。

名古屋を拠点に、全国で活動している合唱団。

80代から、5歳の子どもたちまで幅広い年代の人たちが、合唱に加え、ミュージカルにも取り組んでいる。

 

 

 

この日、練習していたのは

原発事故の被災地を題材にしたミュージカル。

子どもたちが夏休みに被災地を訪れ、原発事故後の現実に向き合うストーリーだ。

 

 

主役を演じるのは名古屋出身の大学生、雨宮由里子(あめみや・ゆりこ)さん18歳。

震災当時6歳だった雨宮さんは、原発事故についてはほとんど知らなかった。

主役を演じることになり、合唱団のメンバーとともに浪江町を訪れ、住民の体験を聞いた。

そんな中で出会ったのが三瓶春江(さんぺい・はるえ)さん。

今も大部分が帰還困難区域の浪江町津島地区出身だ。

ふるさとを失った悲しみを1人でも多くの人に知ってもらいたいと、

三瓶さんは原発事故の実状を語る活動を続けてきた。

 

「子どもたちが、原発事故に向き合って演技をしてくれる、歌を歌ってくれるっていうことに、ほんとに感謝。すごくありがたいし、すごく力を貰える」

 

 

 

公演を1週間後に控えたある日。

雨宮さんには演じ方を迷っているシーンがあった。

 

 

物語には、被災者の生の声として三瓶さんの思いを読み上げるシーンがある。

被害を経験していない自分が、三瓶さんの気持ちになりきる事ができるのか、雨宮さんは悩んでいた。

 

そして、本番当日。

東京ではじめての公演となった今回、1300人の会場が満員となった。

 

 

福島から三瓶さんもかけつけていた

 

雨宮さんは、何度も練習したシーンを懸命に演じた。

「孫たちと自然の中で幸せな生活がしたい。放射線や被ばくなどの不安を感じる事なく、

津島で暮らしたい。私たちにふるさとを、津島を返してください。」

 

 

原発事故後の経験を必死に想像しながら、三瓶さんの思いを受け止めた雨宮さん。

立場や世代を超えて、福島の人々の思いはこれからもつながっていく。

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