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ものがたり

浜通り

早川シンさん

  • 未来デザイナー

明日に故郷の花を咲かせる

3月26日から始まる聖火リレー。1日目のルートは浜通り。震災と原発事故からの復興を目指す市町村をめぐる。楢葉町にあるサッカーの聖地・Jヴィレッジスタートした聖火は、その後、復興の大動脈・国道6号線を行く。

 

 

ルートをたどると、道沿いで花の手入れをする人たちと出会った。ビオレやハボタン、パンジーなど、数十メートルにわたって500株ほどの花々が植えられていた。この方たちは地元の婦人会。きれいな花で、聖火ランナーを迎えたいという。

 

 

メンバーをまとめるのは会長の早川シンさん。3年前から婦人会のメンバーに呼びかけ町で花を植える活動をしている。早川さんはもともと、山で草花を摘み育てて売る仕事を30年以上続けてきた。

「私は通称山女なんですよ。山の道の細い道がどこに続いて行くっていうのくらいは分かりますので。松茸なんかがとれる山もあったんですよ?あんまり教えたくないねぇ。ウフフ」。

楢葉の山は山野草の宝庫。特にヤマユリはあちこちで見られ、町を象徴する花だった。

 

でも、原発事故で全てが変わってしまった。町民の全員が一時、避難を余儀なくされ無人の町となった。5年前に避難指示は解除されたが、早川さんが通っていた山はまだ除染されず、店は今も廃業したままだ。

「ほんとに自然豊かなところなんで、そこに行こうと思っても行けないというのがもどかしいです。ほんとに戻れるものなら戻って生活したいです。」。

 

 

 

今も避難先のいわき市で暮らしている早川さん。花は、遠く離れたふるさとと自身を繋いでくれている大切な存在だという。当初は数人で始めた花の手入れも、最近では毎回20名近く集まるようになった。顔なじみが集まれば、みんなで肩を寄せ合い盛り上がる。避難生活を続ける人、町に戻った人。境遇はそれぞれだけど、みんなが少しずつ、ひとつになってきた。

 

 

 

そんな早川さんたちが、聖火リレーを前に始めたことがある。ヤマユリの造花だ。原発事故後、ほとんど町で見られなくなったヤマユリ。その姿を再現して、聖火を迎えるつもりだという。

「楢葉町になるべく来ていただいて、ありのままの姿を見てもらいたいです。完全に復興してるとは絶対いえないと思いますけれども、でも復興しつつあるっていう姿を、私たちはそれを見てもらいたいなと思って日々頑張っています。」

ふるさとに咲かせる、明日への花。心の中に、いつまでも咲き続ける。

 

 

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