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ものがたり

中通り

川崎三枝子さん

  • 未来デザイナー

人生を変えた出会い

福島市の川崎三枝子(かわさき・みえこ)さん。
2011年、視覚障害のある人を介助するヘルパーとして働いていた川崎さんには、仮設住宅での忘れられない出会いがあるという。

 

 

 

浪江町から避難し、二本松市の仮設住宅で暮らしていた君島一夫(きみじま・かずお)さん。

 

「歩きたくない!俺はこれでいい!」とすっかり心がなえていたのだ。


そんな君島さんに川崎さんは戸惑った。

 

 

そんなとき、君島さんは、ある企画展に連れて行ってほしいと川崎さんに言ってきた。
太平洋戦争のさなか、強制収容所に入れられた日系アメリカ人たちの生活を紹介する展示会。

 

仮設住宅に住んでいる人たちに重なった。何故か重なった。

声を出して読んでいるうちに身体が震えてきて涙で声がかすれていた。

 

 

 

 

君島さんはどこでこの企画展を知ったのか、なぜこれを見たかったのか分からない。

私に何を伝えたかったのかも分からない。

あの仮設の人々は、ただの可哀想(かわいそう)な人達ではないと教えてくれたのだと思う。

 

それから・・・

 

 

 

 

君島さんがきっかけで始めた、視覚障害のある人たちに本や新聞を読んで伝える音訳のボランティア活動。
いまでは、すっかり川崎さんのライフワークだ。
そして、君島さんが仮設を出てもなお、二人の交流は続いている。

 

 

十年経った今、私もこうして繋(つな)がっている。

君島さんとの出会いから始まった震災後の十年は、私の価値観を少しずつ変えた。

そして今の生き方に繋(つな)がっているのだ。

川崎三枝子

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