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ものがたり

中通り

井上まゆみさん

  • 未来デザイナー

人の輪を育む人形浄瑠璃

郡山で人形浄瑠璃!?

 

 

 

 

 

日和田公民館で活動する、高倉人形浄瑠璃座のみなさん。

全員が未経験者です。80代のお年寄りから小学生まで、総勢20名あまり。

語りと三味線に合わせ、3人で1体の人形を操る人形浄瑠璃。

 

高度な技量、人形を操る体力が要求されます。

 

 

 

 

一座を取り仕切る井上まゆみさんが、地域に眠るお宝を見せてくれました。

 

なんと郡山の日和田町高倉地区では江戸時代、人形浄瑠璃の一座がいて、庶民の娯楽として親しまれていました。

しかし時代とともに関心は薄れ、郡山の人形浄瑠璃文化は忘れ去られていきました。

当時の人形は「高倉人形」として福島県の重要有形民俗文化財に。

いまは日和田公民館に保管され、誰でも自由に観ることができます。

 

 

 

 

 

 

当時の庶民の娯楽として親しまれた人形浄瑠璃。

時代とともに関心は薄れ、郡山の人形浄瑠璃文化は忘れ去られていきました。

 

 

 

 

 

 

地域の公民館に長年勤めてきた井上さん。

人口流動や町内会活動の減少などから、

地域のつながりが薄れゆく危機感を抱いていました。

井上さん「自分たちの地域に対する愛着が湧いて、コミュニティが活性化する一助になれば。」

 

 

 

人形浄瑠璃文化で地域のつながりを

井上さんは一念発起。人形浄瑠璃復活のプロジェクトを立ち上げました。

とは言ったものの、指導者も肝心の人形もない、ゼロからのスタート。

井上さん「あれもないこれもない、ああどうしようと。」

 

 

 

 

 

それでもめげない井上さん。

プロジェクトに賛同した地域のみなさんと一致団結。

行政からの補助金やクラウドファンディング等も活用して活動資金を確保。

稽古用の人形を製作し地域の小学校で体験会を開催。

県外の指導者に基礎から稽古をつけてもらうなど、担い手の育成環境を整えていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

人の輪を育む人形浄瑠璃

井上さんが活動の中で大切にしてきたことがあります。

「人と人とのつながり」をつくることです。

 

 

技を磨くことは大切。

でも、それ以上に地域の人と人がつながる場にしたい。

地域に息づいた伝統芸能を知り、地域の人たちが愛し、誇りをもつ。

その伝統芸能が地域の人と人のつながりを作る。

井上さんはそう願っていました。

 

 

 

 

参加する子どもたちは、みな一様に「辞めたいと思わない」、「楽しい」と言います。

 

3人で息をそろえる人形浄瑠璃の奥深さ、

そして、地域のみんなで集まる稽古場の居心地の良さ。

人形浄瑠璃が人の輪を育んでいました。

 

 

つながれる人の輪

 

 

 

 

年に1回、地元の舞台で稽古の成果を披露しています。

特に期待がかかるのが小学生から高校生のジュニアクラス。

部活動の掛け持ち、受験など学校の活動と両立して懸命に稽古を積んできました。

 

 

 

高校3年生の嶋田朔夜さん。小学生の頃から活動に参加し、 経験豊富な若手期待の星。

高校卒業後も、技に磨きをかけて後輩を指導しながら、郡山での人形浄瑠璃の知名度を高めたいと考えています。

嶋田さん「稽古場の雰囲気をみたらわかるんですけど、みんなすごい明るく接してくれて。

(人の輪を)つなげていくことに関しては、率先してやらなきゃいけない立場だと思っています。井上さんには小さい頃からお世話になっていて、第二の母親みたいなもんですね。」

 

コロナ禍で稽古ができずに苦しかったこの数年。嶋田さんたち高校3年生は進路を考える大切な時期。

その中でも人形浄瑠璃を通して地域のみんなと過ごす時間は途切れませんでした。

本番では大勢のお客さんの前で、5つの演目を演じきりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次世代につながれる、人形浄瑠璃文化の復活に込めた地域への愛情。

埋もれていた地域の宝が、人の輪を育んでいました。

 

井上さん「まだまだ芸はねつたないところはあるかもしれないけど。

同じ釜の飯を食べるっていう、やっぱり同じ目的に向かって時間を共有することで

やっぱりおのずと絆が生まれますよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

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