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ものがたり

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後藤みづほさん

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今を生きる人へ 昔話の持つ力

安達太良山の麓、大玉村。

田畑に囲まれた、自然豊かな村だ。

 

 

 

この村で、いま大人気の場所がある。

お客さんが食べているのは、

地元の食材を使った、村のお母さんたちの手作り料理だ。

 

 

しかし、人気の秘密は、料理だけではない。

お客さんが心待ちにしているのが、女将の後藤みづほさんによる地元の昔話だ。

 

 

 

 

レパートリーは200以上。中でも人気なのが、『寿命の話』。

 

 

 

 

「昔まずあったと。神様が一生懸命生き物作ってた頃の話だっつうからね。寿命くれっから集まれー。そう言ったらな、みんな集まってきたな・・・」

 

二本松市で生まれ育った後藤さん。50年前、大玉村に嫁いできた。

何も知らない農村での暮らし。当初は寂しさを感じていた。

村になじめない後藤さんに、優しく接してくれたのが、夫の母、ユキさん。

後藤さんを散歩に連れ出しては、村に伝わる色んな昔話をしてくれた。

 

 

 

 

 

日照りが続いても涸れることのない、安達太良山の伏流水。

この水を大事にしてきた言い伝えも教わった。

 

 

 

「汚しちゃなんないとか、この水は極楽に続いているとか、そういう言い伝えとともに、守るべきものを守ろうみたいな」

昔話を通じて、後藤さんは村に親しみを持つようになっていった。

 

後藤さんは、ユキさんが亡くなった後、この昔話を伝えたいと、村で語り部を始めた。

この日やってきたのは、97歳のお母さんを連れた常連さん。

 

 

 

 

高齢になったお母さんは、親しい人も少なくなり、外出もほとんどしなくなった。

でも、ここだけは通い続けている。

 

 

 

「おふくろ、なんの楽しみもなく、死んじゃうのかなっていうような言い方が多くなってるんですよね。そういうときに後藤さんの話聞いてると、明るく、明日楽しく生きられるような話が多いんです。」

 

 

 

「自分の命とか、親の命とか、そういうのを考える機会になったりとか、それから楽しみの中の一つに加えていただけたら、望外の喜びですよね。」

 

 

昔話が、今を生きる人の力になっている。

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