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ものがたり

中通り

谷藤允彦さん

  • ポジぃちゃん図鑑

モグラを超えた男

地層を見つけるとハンマーを立てて、土を手に取る男性。

土の中のことならモグラに負けないと豪語する福島の地下のスペシャリストだ。

谷藤允彦さん。職業は穴を掘ること。郡山市で、井戸や温泉の掘削工事、ボーリング調査の会社を率いてきた。

 

 

自称、「福島県内の地下ことならモグラよりも詳しい」と言う谷藤さん。

温泉は20か所近く、井戸は1000か所以上、工事に関わってきた。

さらに、地中の資源を活用する新たな技術も開発中。

省エネを実現する再生可能エネルギー、「地中熱」の活用だ。

谷藤さんは、地下のあらゆるものを暮らしに役立ててきた。

 

 

 

 

大学で地質学を学んだ谷藤さん。

奥深い地中の世界に魅了され、地質調査の会社に入社したという。

「地下というのは私にとっては、無限に、わからないことが生み出される知的な興味を次から次へと生み出してくれるそういう存在なんでしょうね。」

 

 

 

プライベートでも地中の世界への探究心は尽きない。

常に持ち歩いている地層観察のための七つ道具。

ハンマーやルーペが入り、重さは6キロもあるが、海外旅行にだって持っていく。

珍しいものを見つけると、ついつい掘り出してしまうが。妻の薫さんは、土や岩を持ち帰る谷藤さんを理解不能だという。

 

 

 

県内のほとんどの町で仕事をしてきた谷藤さん。

忘れられない現場が葛尾村での井戸の掘削工事だ。

葛尾村では、原発事故の影響で、水源が汚染されていないか住民の不安があった。

丹伊田政治さんもその一人。3年前に帰還を決めたときも、山から引いた水を飲料や農業用水に使えるか不安があった。

 

 

福島県の井戸掘りの専門家として相談を受けた谷藤さん。

深井戸を掘ることができる技術で、安全な水を確保し、復興に役立てることを考え、県内にある12の掘削会社と協力して約200本の井戸を掘った。

 

 

 

谷藤さんの会社が掘った井戸。その水を使って、丹伊田さんは、野菜や果物の栽培を再開している。井戸があることで、ふるさとでの暮らしを取り戻すことができたと話す。

「水がないとどうにもならない。最高の気持ちだ。」

 

 

 

“モグラ”が掘った穴は人々の暮らしを支えている。

まさに「縁の下の力持ち」だ。

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