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ものがたり

浜通り

東日本大震災・原子力災害伝承館

瀬戸真之さん

  • 福島LOVERS

“記憶のカケラ”収集人

震災からあと半年で10年となる先月(2020年9月)、震災と原発事故の経験を後世に伝えていくための福島県の施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」がオープンした。津波で流された郵便ポストや、原発事故によって避難を余儀なくされた子どもたちのランドセルなど、およそ150点の実物資料が展示されている。

 

 

資料を集めているのが、伝承館の学芸員、瀬戸真之さんだ。これまでに仲間と集めた資料は全部で24万点、実物資料(モノの資料)だけでも1万点にのぼる。調査・収集して収蔵庫に保管するまでは、写真撮影やカビ防止処置(燻蒸)などたくさんの行程があり、作業に追われる毎日だ。

 

 

原発事故によって避難を余儀なくされた地域では今、建物の解体が進むとともに、当時を物語る資料が次々と失われている。原発事故前は400人近い生徒がいた浪江中学校(浪江町)も解体されることが決まっている。調査に入った瀬戸さんは、「いま我々が残さなければ消えてしまう。最後の姿を残したい」と語る。

資料約50点を収集することに決め、さらに動画や360度撮影できるカメラを使って学校の姿を記録として残す。

 

 

 

瀬戸さんは、埼玉県生まれの埼玉県育ち。震災後、復興の過程を研究するために福島にやってきた。当初は「記憶や記録を残すことにあまり関心がなかった」と言う瀬戸さんだが、地元の人との出会いを重ねるうちに、「残すことの大切さ」に気がついたのだという。

震災と原発事故で多くのものを失った人たちにとって、かつての記憶やふるさとの記録が、立ち上がり前を向くための「足場」になるのだと瀬戸さんは考えている。

 

 

瀬戸さんは、集めてきた資料から何を伝えるかについても試行錯誤を重ねている。

伝承館オープンから1週間後には、以前資料を提供してくれた葛尾村の松本さんを訪ね、原発事故後に飼っていた牛を安楽死させたときの話をきいた。松本さんの憤りや無念さとともに「こういうことがあっとことをリアルに伝えてほしい」との言葉を受け止め、今後の展示のバージョンアップを誓う。

 

 

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