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ものがたり

中通り

泉浩樹さん

  • まん福

継続可能な農村カフェ

『大人気!農村カフェ』  

田んぼと山に囲まれた石川町梁瀬地区に、行列の出来る一軒のカフェがある。

『農村食堂 里のカフェ』。

野菜たっぷりのオシャレなうどんや、祝日と週末限定、自家製小麦を使ったごぼうのピザなど、

どれも身体にやさしく、とにかく旨い!

そして、女性に一番人気は、季節のパフェ。

フルサイズはイチゴを30個使った、大満足のひと品。原価すれすれの950円だ。

 

 

 

 

 

さらに、このカフェでは注文した料理以外にも、ビュッフェ形式で地元野菜をふんだんに使った

15種類ほどの料理を愉しめる。

その名も”おかずBAR“だ。

 

 

 

オーナーの泉浩樹さん、57歳。

松平健似の渋ーいおじさんだ。

石川町で生まれ育った泉さん、実は意外な経歴の持ち主だ。

 

 

18歳で故郷を離れた泉さんは、これまで30年近く東京でプロのカメラマンをしてきた。

ミスターチルドレンのプロモーションビデオや、映画『ノルウェイの森』、さらに数々のCMの撮影もしてきた

一流カメラマン。

しかし8年前、原発事故が起きると、東京での便利な暮らしに違和感を強く感じるようになった。

「たぶん人間は水と土と空気と太陽光が基本になっているので、そこを離れて生活はありえない。

地に足がついた生活をしなきゃいけないだろうと。じゃあ、継続、持続可能な社会とはどういうことなのか」

持続可能な暮らしとは、どうすればできるのだろう?

継続可能な社会のあり方とは、一体どんなものだろう?

そんな思いを具現化するために5年前故郷に戻り、始めたのが里のカフェだった。

 

 

 

 

泉さんの1日は、薪ストーブに火を入れるところから始まる。

「周りにあるもので燃やせるモノがあるので、できるだけ電気や石油に頼りたくないですね」

食材調達も、店のお隣にある畑だ。

この日は、菜の花を摘んでおひたしを作った。

さらに、店の残飯を鶏に与え、代わりに卵をいただく。

循環型の暮らしは、意外と近くのものを活かす暮らしなのかもしれない。

 

 

 

 

さらに近くの農家から、おすそ分けを頂く事もある。

ネギ、キュウリ、にんじんなど、作りすぎたり、形が悪い規格外品となった物を譲り受け、

おかずBARの材料にしている。

頂いたものや育てたものを、みんなで分かち合う、里のカフェの心意気だ。

 

 

 

週に一度、水曜日の休みの日には、田んぼや畑で作物を作る。

ここでも継続可能を支える仕組みに出会った。

牧場の車が、堆肥を田んぼにもってきた。

泉さんがつくった米の稲わらを牛の餌として貰うかわりに、牛糞で作った堆肥を田んぼに戻す耕畜連携だ。

こういったつながりが、泉さんの目指す、継続可能な社会のあり方を支えている。

 

 

 

4月。

泉さんが、近くの山へと向かった。

『山森沢桃源の里』。

10年前から、地元の有志がコツコツと花を植えてきた、石川町の花見山だ。

 

 

4月。山が色づき始めたこの日、泉さんは、自前の撮影機材を持ち込んだ。

「これが里山公園のPRになるのならと思って、自分が持ってる能力とか技術が地域の役に立つんでしたら、しまってても出し惜しみになっちゃうんで」

遊びに来た子どもたちと分かち合う、故郷の春。

泉さんは、今の暮らしを気に入っている。

「八百万の神がいらっしゃるんだったら、どんなところにも神様がいるわけであって、

そういったものに感謝しつつ生活できるんだったら、そっちの方がうれしいかなとは思いますね」

 

 

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